日本データベース学会

dbjapanメーリングリストアーカイブ(2010年)

[dbjapan] 「言語と知識 --最新言語処理研究の射程--」講演会開催のお知らせ


(重複して受け取られた場合はご容赦ください)

日本データベース学会の皆様

情報通信研究機構の土田と申します。

3月9〜11日に東京大学本郷キャンパスで開催される情報処理学会創立50周年記
念全国大会および言語処理学会第16回年次大会において両学会共同企画で東大
安田講堂にて開催いたしますイベント「言語と知識 --最新言語処理研究の射
程--」について御案内申し上げます.


変貌著しい言語処理研究の最前線と,それによって予見される社会的インパク
トについて,言語処理関連プロジェクトのリーダーが講演を行い,言語への工
学的アプローチに対する理解を深めます.皆様,奮って御参加下さい.


開催日時:  2010年3月9日(火) 15:30-18:00
会場: 東京大学 安田講堂

講演:

「これからの言語処理とその応用」
長尾 真 氏(国立国会図書館 館長)

「総合学術オントロジー」
橋田 浩一 氏
(産業技術総合研究所 社会知能技術研究ラボ長)

「MASTARプロジェクト&ALAGINフォーラム」
中村 哲 氏
(情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究セン
ター 副研究センター長)

司会: 鳥澤健太郎(情報通信研究機構)


参加には,大会への聴講参加登録が必要となります(無料).

参加登録の事前予約は2/26(金)19:00が締め切りとなっております.参加者数
を把握するためにも事前予約をお願い致します.事前予約してただきますと,
無料の大会プログラム・チュートリアル資料や有料の資料を確実に入手いただ
けます.当日登録の場合,資料がなくなり次第,入手できなくなる可能性がご
ざいますので,事前予約を是非お願い致します.

詳しくは,情報処理学会創立50周年記念全国大会のホームページをご覧下さい.
http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/taikai/72kai/index.html


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趣旨:

知識の表現と伝達のための最も一般的な手段である言語が果たすべき役割は知
識社会においてますます重要性を増している.そして,近年の言語処理技術は,
そのような言語の機能を増幅することによって社会における知識循環を高度化
することを射程に入れつつある.本セッションでは,そのような言語処理に関
する研究プロジェクトに関するプロジェクトリーダーらによる講演を通じて,
変貌著しい言語処理研究の最前線とそれによって予見される社会的インパクト
について紹介し,言語への工学的アプローチに関する理解を深めてもらうこと
を狙う.


講演1「これからの言語処理とその応用」
講演者 長尾 真 氏(国立国会図書館 館長)

今日インターネット上には会話文,論説文,小説文など種々のスタイルの文章
がぼう大に存在している.またテキストと他言語への翻訳文の対などもある.
これらのテキストを何十億文と収集しデータベース化すれば,これは言語のあ
らゆる可能な表現の集りとみなすことができよう.言語の総体がこのように客
観的な形で把握できれば,言語研究は自然科学的手法で行うことが出来ること
になる.そういった立場からスーパーコンピュータの力を借りて言語処理が行
われ,多くの優れた成果が出て来ている.これらは機械翻訳,情報検索,情報
信頼性,電子図書館などの研究開発に大きく貢献するようになっている.また
これら大量のテキストデータから知識を抽出し,これを組織化し言語処理過程
に組み込むことによって,言語処理の精度が向上し,また種々の言語処理の応
用分野のシステムの性能の向上につながるという好循環が実現している.これ
までの半世紀の言語処理研究の努力がようやく実を結び,社会に具体的な形で
貢献する時代に入って来た.


講演2「総合学術オントロジー」
講演者 橋田 浩一 氏(産業技術総合研究所 社会知能技術研究ラボ長)

ますます困難になりつつある社会的課題を解決するためには,従来を上回る規
模での科学的知識の体系化とその社会的共有が必須と思われる.それには,研
究領域のタコツボ化を防ぎ領域間の融合を進めつつ,科学研究と実社会とを融
合する必要があるだろう.その意味での「科学的根拠に基づく社会
evidence-based society」の構築に資するため,情報処理学会の「次世代情報
処理ハンドブック」および日本認知科学会の「認知科学オントロジー」を中核
として,多数の学会の共同作業により,学術的な概念をオントロジーに基づい
て構造化・体系化して「総合学術オントロジー」を編纂し,これによって研究
分野の間および研究コミュニティと一般社会との間の相互作用を活性化する計
画を進めている.


講演3「MASTARプロジェクト&ALAGINフォーラム」
講演者 中村 哲 氏(情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究セン
ター 副研究センター長)

大量のコーパスと統計モデル,機械学習による音声言語処理手法の到来は,研
究開発フェーズから実際の場面での性能向上を産業界,社会とリンクした形で
持続的に直接行える,新しい研究開発プロセスの到来と考えることが出来る.
さらに,Webの仕組み,Web上の情報を利用することで,世の中にある固有名詞
の取り込み,多言語辞書の構築やコーパス収集,単語の関係抽出などの解析を
行うことも可能になる.当機構では,Web,ネットワークを利用し,持続的に研
究開発を進めるMASTARプロジェクトを2008年4月から開始した.具体的には,ネッ
トワーク型の音声翻訳,機械翻訳,音声対話システム,言語資源の研究開発を
進めている.また,2009年3月には,当プロジェクトの成果だけでなく,産学官
が成果を持ち寄り,成果を融合し,新たな展開を促進する高度言語情報融合
(ALAGIN)フォーラムが設立された.これらの活動の現状と狙いについて紹介す
る.