日本データベース学会

dbjapanメーリングリストアーカイブ(2019年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 11, No. 7: VLDB 2018, WISE 2018, iiWAS 2018, ISM 2018, BigData 2018, ABCSS 2018


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2019年2月号 ( Vol. 11, No. 7 )
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本号では,国際会議の参加報告を5件と,ワークショップ開催報告を1件を,ご
寄稿いただきました.2018年8月開催の VLDB 2018,11月開催の WISE 2018,
iiWAS 2018,12月開催の ISM 2018,BigData 2018,ABCSS 2018 のご報告になり
ます.会議や研究の最新動向,キーノートにおけるポイント,Best Paper Award 
に関すること,ご自身の発表,ワークショップ運営,学際的な内容,等々,盛り
だくさんの記事になっております.ぜひお読みいただければと存じます.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたらnews-com [at] dbsj.orgまでお寄せください.

                                日本データベース学会 電子広報編集委員会
                                        (担当編集委員 村上 直)

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目次
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1.VLDB 2018 参加報告
  梅本 和俊(情報通信研究機構/東京大学)

2.WISE 2018 参加報告
  中村 宏明(日本IBM 東京基礎研究所)

3.iiWAS 2018 参加報告
  伊東 謙介(東京大学)

4.ISM 2018 参加報告
  柿本 穂香(関西学院大学)

5.BigData 2018 参加報告
  小山田 昌史(NEC データサイエンス研究所)

6.ABCSS2018@IEEE BigData 2018 開催報告
  吉田 光男(豊橋技術科学大学)


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■1■ VLDB 2018 参加報告
               梅本 和俊(情報通信研究機構/東京大学)

少し前になりますが,2018年8月27日から31日までブラジルのリオデジャネイ
ロで開催されたVLDB2018(44th International Conference on Very Large 
Data Bases)に参加してきました.DBSJ会員の方には言わずもがなかと思いま
すが,VLDBはSIGMOD・ICDEと並ぶDB分野トップ会議の御三家の1つです.VLDB
の特徴の1つとして,開催年の6月までの1年間に論文誌PVLDBに採択された論文
が会議で発表されるという点があげられます.VLDB2018では,PVLDBのVol. 11
に採択された(+Vol. 10からrolloverになった)129件の論文がResearch 
Trackにて発表されました.当該トラックの採択率は大体18%で,1発採択はほ
とんどない(1.89%),投稿数が3月にピークを迎える(182件)などとあわせ
て,例年と同様の傾向のようでした.参加者は合計で762人で,国単位ではア
メリカ(200人強),開催国のブラジル(150人強),中国(50人強)がTop-3
でした.日本は10人強で8位でした.(いずれの人数もオープニングのスライ
ドから読み取った目分量です.)

私が参加した本会議(28日〜30日)では,6セッションが並列したプログラム
が組まれていました.同じ時間のスロットに,Research Track・Industry 
Talk・Tutorial・Demoが混在しているため,油断していると(私のように)注
目のトークやデモを見逃してしまうかもしれません.(ちなみに,Research 
Trackの論文は夜にポスターでも発表されていたので,そちらでも詳しく話を
聞くことができました.)内容については,クエリ・Join・最適化・
In-MemoryのようなDB色の濃いセッションは多いものの,それ以外にも新しい
系(New Architectures and Challenges; Emerging Topics)や応用系
(Trajectories; Data Mining and Data Science; Knowledge Graphs and 
Semantic Web),機械学習系(Database Techniques for Machine Learning; 
Tutorial on Data Integration and Machine Learning; Panel on Data and 
Algorithmic Ethics)など,データに関するありとあらゆるトピックをカバー
しているという印象を受けました.

Best Paper Awardには,「The Ubiquity of Large Graphs and Surprising 
Challenges of Graph Processing」が選ばれました.本論文は,ざっくりと言
うと,実際の現場ではどのような種類のグラフがどのように扱われているのか
を調査し,得られた知見をもとに今後の解決が望まれる課題を議論しています.
グラフに関する研究が膨大にある中で,それらが本当に意味のある問題を解い
ているのかという(誰もが1度は思ったことのある?)疑問に答えることに真
摯に取り組み,実現場の調査を通じてリアルな課題を明らかにしたことは,グ
ラフ研究の健全化にもつながる重要な貢献だと感じました.(受賞理由もそん
な感じでした.)システムやハードウェアの性能調査に関する論文がVLDBでも
発表されることは知っていましたが,こういうユーザ調査系の論文があること
に驚くとともに,調査・モデル化・活用という研究サイクルの普遍性を改めて
実感しました.その他の表彰関連として,データ統合に関する貢献に対して
Renee J. Miller(Northeastern University)がWomen in Database Research 
Awardを,インタラクティブなデータ分析のための先進的なシステムに関する
貢献に対してTim Kraska(MIT)がEarly Career Research Contribution 
Awardを受賞しました.また, 10-Year Best Paper Awardには,「WebTables: 
Exploring the Power of Tables on the Web」が選ばれ,受賞者の1人である
Michael J. Cafarella(University of Michigan)が,当時のテーブルデータ
の状況,10年間で本論文が与えたインパクト,この先の10年での(構造データ
の需要がますます高くなることに起因する)課題について,講演を行いました.

VLDB2018では3件のキーノートがありました.(本当は4件の予定でしたが,講
演者の1人のJure Leskovec(Stanford University)が来られず中止になりま
した.)上述のWomen in Database Research Award受賞者であるRenee J. 
Miller(Northeastern University)は複数のオープンデータの統合について,
Cong Yu(Google AI)は信頼構築のための構造データの活用についての講演で
あり,いずれも上述の10-Year Best Paper Awardの受賞講演と関連するテーマ
となっていました.残りの1件は,Beng Chin Ooi(National University of 
Singapore)によるヘルスケアのためのデータ収集・格納・分析・活用に関す
る講演でした.講演の大半は,過去に取り組んできた個々の研究の紹介だった
のですが,最後に展望として,患者中心の医療データ管理のためのプラット
フォームが語られていました.その概要をざっくりと述べると,講演者の研究
グループが開発しているストレージ・分析技術をブロックチェーンと組み合わ
せることで,医療データを医療機関でなく個人が所有し,その利用権を他者に
与える代わりに恩恵を受けられる仕組みを作るというものでした.個人的に,
「使う側にメリットがある仕組みを考えることで,データを頑張って集めるの
でなく,データが自然と集まる」という状況を作ろうとしている点が興味深かっ
たです.

最後になりますが,VLDB2018参加のきっかけを頂いたACM SIGMOD日本支部に感
謝申し上げます.VLDBに参加するのは初めてだったのですが,自分の専門であ
る情報検索と関連するトピックもあり,そのレベルの高さに良い刺激を受けま
した.また,本会議に参加されていた皆様にも大変お世話になりました.ビザ・
予防接種・治安など,不安とハードルが自分にとって過去最高だった今回の出
張をトラブルなし(フライトキャンセルによるブラジル・ドバイでの追加滞在
を除く)で終えられたのは,ひとえに皆様のおかけです.

VLDB2019はロサンゼルス,そしてVLDB2020は東京にて開催されます.日本から
多くの投稿・発表・参加があることを期待したいですね.自分も何か貢献でき
るように頑張りたいと思います.

梅本 和俊(情報通信研究機構/東京大学)


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■2■ WISE 2018 参加報告
                 中村 宏明(日本IBM 東京基礎研究所)

2018年11月12日から15日までアラブ首長国連邦のドバイで開催された WISE 
2018 (The 19th International Conference on Web Information Systems 
Engineering)に参加しましたので,報告いたします.ドバイといえば世界最
高層ビルを中心とする急成長した都市の風景が思い浮かびますが,会議が行わ
れたザーイド大学は,中心部から砂地の中の道路を車で 30 分ほど走ったとこ
ろにあります.

WISE では 2000 年に最初に開催されて以来,時代に合わせてテーマが変遷し
ているようですが,今年の目指す方向は AI でした.会場に入って最初に見る
ポスターには会議名よりも上に Web Engineering in the Era of Artificial 
Intelligence と書かれていて,またオープニングセレモニーなどでもAIがキー
ワードとして繰り返されました.WISE 2018 には,27 カ国から 209 件の論文
投稿があり,48 件 (23%) がフルペーパーとして,21 件がショートペーパー
として採択されました.論文の分野として多くを占めていたものはソーシャル
ネットワーク,データマイニング,レコメンダシステムなどで,過去数年のプ
ログラムと比較してそれほど大きく変わってはいないですが,機械学習を用い
る手法がより多くなっているようでした.

今までの WISE ではほとんど取り上げらず,論文の採択数が増えた分野として
はブロックチェーンがあり,関連する論文は5件ありました.筆者らもブロッ
クチェーン技術に関して,Inter-Organizational Business Processes 
Managed by Blockchainというタイトルの論文を発表しました.ブロックチェー
ンは複数の参加者の間でデータを共有して迅速で安全なやりとりを行う基盤を
提供しますが,組織を越えたビジネスプロセスの実行を管理する仕組みとして
ブロックチェーンの基盤を活用する方法を,デモを交えて紹介しました.

他に目にとまった分野としては対象領域を医療データとする研究があり,関連
する論文が少なくとも4件ありました.医療データをうまく活用する技術によ
る社会的インパクトへの期待が大きくなりつつある一方で,プライバシーの保
護やデータ量の爆発的増加への対処など課題も多いので,これからも活発な研
究分野であると予想されます.

次回の WISE 2019 は香港で開催されます.

中村 宏明(日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所)


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■3■ iiWAS 2018 参加報告
                        伊東 謙介(東京大学)

2018年の11月19日から21日にかけて,インドネシアのジョグジャカルタで開催
されたカンファレンスiiWAS2018(The 20th International Conference on 
Information Integration and Web-based Applications & Services)へ参加し
ましたので,以下にその概要を報告致します.予め申し上げるべき点として,
情報工学系の研究者と共に論文を執筆したものの私のバッグラウンドは経済学
であり,カンファレンスという文化に触れること自体実は今回が初めての経験
でした.そのため本カンファレンスの傾向に関しては,他の参加者の言葉を借
りながら行いたく思います.

まず基本的な情報について,iiWASはネットワーク構造からeコマースの分析ま
でWeb工学に関する研究を広く扱う国際カンファレンスであり,採択率は例年
33%前後,今回は61件がproceedingsに掲載されました.日本からの論文が多い
点も特徴で,今年は掲載論文の約1/3が国内の研究グループによるものです.
また特筆すべき点として,iiWASでは採択された論文の内約半数がさらなる加
筆修正を経た上で関係するジャーナルへと掲載されることになっており,両方
の実績獲得を見込むことが可能です.私が所属する経済系の研究室では一般的
な情報工学系の研究室に比べジャーナル掲載が重視されるため,これは大変魅
力的でした.

当日に知り合った先生曰く,iiWASは他のカンファレンスに比べて研究者間の
交流をより重視する傾向があるようです.この意図は,プログラムに基調講演
やディナーと言った交流促進を目的とする一般的な内容に加えて現地の観光名
所を臨みながらの観劇などが含まれていた点からも窺い知れます.

研究発表の面では,個人的な話ながら我々の論文がBest Paper Awardに選ばれ
た旨が何よりも印象的でした.論文ではGoogleのPageRankに代表される選択ア
ルゴリズムにメカニズムデザインの報酬設計を導入することでノード達にネッ
トワーク構造の正直な申告を促すモデルを提案したものの,本文は経済学寄り
のインセンティブ設計に関する議論が中心であるため受け容れられない可能性
も十分考えられました.それだけに採択のみならず受賞まで出来たことは大変
光栄であり,たとえ他分野でもWeb工学の文脈とシナジーが見出せる場合には
評価するiiWASの柔軟な姿勢を感じ取ることが出来ました.シンプルな先行研
究を選び,かつ文章の表現や構成に多くの労力を割くことで比較的理解が容易
な提案に落とし込めた点も評価に繋がったのかなと顧みています.

今回紹介した一連の特徴: 扱うトピックの広さ, 程良い採択率, ジャーナル掲
載の可能性, 研究者間交流が重視されたプログラム, 経済学的議論も受け容れ
る評価の柔軟性 などから鑑みるに,iiWASは他分野からWeb工学の研究に挑戦
する研究者達にとっても非常に適したカンファレンスでしょう.少しでもご興
味のある方に対しては次回夏の締切に向けた投稿準備を強くお勧め致します.

伊東 謙介(東京大学学際情報学府 田中秀幸研究室)


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■4■ ISM 2018 参加報告
                      柿本 穂香(関西学院大学)

2018年12月10日から12月12日の3日間,台湾の台中市にて開催された「The 
20th IEEE International Symposium on Multimedia (IEEE ISM 2018)」につ
いての参加報告を致します.IEEE ISMはIEEE Computer Society主催のマルチ
メディア全般を対象とした国際シンポジウムです.本会議の3件のキーノート
スピーチと7件のセッションに加えて4件のワークショップが本会議の一部とし
て開催されます.本会議とワークショップを合わせて,約60件の発表があり,
参加者は約200名の大規模なシンポジウムです.本会議の採択率はフルペーパー
23.6% ,ショートペーパー26.4%であり,質の高い議論が繰り広げられていま
した.対象分野はマルチメディア全般と非常に広く,マルチメディア信号処理
からネットワーク・セキュリティ,E-learningや仮想現実までカバーしていま
す.全体的に画像処理の占める割合が大きく,大半が画像処理系,数割がネッ
トワーク系 (Peer-to-peer,プロトコル,セキュリティなど)で,音響処理
系は数件でした.私の研究に関係するマルチメディア情報検索とは異なるトピッ
クの研究に多く触れることができ,非常に刺激的でした.

私は「International Workshop on Machine Learning and Computing for 
Visual Semantic Analysis (MLCSA)」という機械学習とビジュアルセマン
ティック分析に関するワークショップで映画予告編に含まれる演出分析手法に
ついて発表を行い,演出分析における機械学習手法に関して有益なコメントを
いただきました.小規模ワークショップということもあり,私のように国際シ
ンポジウムでの発表と議論を目標としている学生にとっては非常に学びの多い
場であると思います.日本からの発表は10件程度ありました.

今回,学生として最も興味深く感じたのが,ACM SIGWEBのChairでもあるDick 
Bulterman氏のキーノートスピーチ「The‘u’in Multimedia stands for 
humans」です.最終的に人間が触れるものである以上,情報のプロセッシング
にはデータを機械的に処理するPhone Scaleだけでなく,データの意味解釈を
含むHuman Scaleが不可欠であるというのが,Bulterman氏の主張です.画像分
析で単なる「家」と特定されるか,ユーザにとっての「思い出の家」と特定さ
れるかという点には,確かに大きな差があるように思います.以降個人的な,
非常に小さなスケールのEmotion Dataが注目され,あらゆる分野に応用されて
いくべきとするこの考え方は,私が研究テーマとして取り組んでいる映画予告
編のパーソナライゼーションなどにおいても重要な要素と考えられます.

このようにISMへの参加は,非常に学びが多く刺激的な経験となりました.ISM 
2019は2019年12月9日から11日にかけてアメリカのサンディエゴでの開催となっ
ていますので,投稿を検討してみると良いのではないでしょうか.

柿本 穂香(関西学院大学大学院総合政策研究科 角谷和俊研究室)


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■5■ BigData 2018 参加報告
              小山田 昌史(NEC データサイエンス研究所)

2018年12月10日から13日にかけて米国シアトルで開催された IEEE BigData 
2018 に参加いたしました.BigData はその名の通りビッグデータに関する研
究を広く受け付ける会議です.実際に参加しての抱いたイメージは,「VLDB / 
SIGMOD」などデータ工学分野,「KDD / ICDM / SDM」などデータマイニング分
野,「IPDPS / CCGrid」など分散システム分野,「SOSP / OSDI」などOS・シ
ステム分野の国際会議を一緒にしたというものです(PCがシステム,データ工
学,データマイニングの主要研究者から構成されていることが一因かと思いま
す).第一回が2013年とまだまだ新しい会議ですが,参加者が1000名を超
えるなど人気は高く,難関会議としてのポジションを確立しているようです.
企業からの参加者も多く,注目度も高いようでした.

キーノートは5件あり,日本からも東大/NIIの喜連川先生がご発表をなされて
いました.数件,私が聴講できたものの内容をピックアップしてご紹介します.

GoogleのBlaise Aguera y Arcas氏からは,"Decentralized Machine Learning"
という題目で,携帯電話などの末端デバイスが分散協調して機械学習をおこな
う,という野心的な内容について話がありました.携帯電話などのデバイスか
ら得られる情報はプライベートな情報のため,中央のサーバには送らず,学習
に必要な勾配情報のみをデバイスでやりとりする,というような内容です.
SGDをベースとし,少ない通信回数で効率的に学習を進めるためのテクニック
を提案しています.内容は機械学習系のトップ会議AISTATS'17で発表されたも
ののようです.

Univ. Buffalo SUNYのAidong Zhang教授からは,"On Metric Learning for 
Complex Data Analysis"という題目で,機械学習における計量学習に関して,
氏のグループで近年ご発表された内容をいくつか紹介されていました.計量学
習は,データとラベルが与えられたとき,ラベルがうまく距離空間上でまとま
るように,距離空間を学習するというタスクです.うまい距離空間を学習する
ことで,分類問題やクラスタリングなど,多くのタスクの性能を向上させよう
というものが問題意識となります.氏のグループでは,例えばラベルが 0/1 
ではなく確信度(確率値)を持っていた場合の計量学習など,様々な問題設定
を考え,実直に解法を提案されているようでした.それぞれ良い会議に通って
おり,問題設定のうまさを感じさせられました.

一般セッションでも多くの面白い発表がありました.文字数の都合上,個別の
研究のご紹介はいたしませんが,効率的な階層ストレージの実装の話,ビッグ
データ向けのアプリケーション向けのテストケースの生成の話,マルチタスク
学習の話など,大変多岐に渡る発表が聞けるため,食傷気味になることなく,
全日を楽しんで参加することができます.また,BigDataの特徴として,ワー
クショップや特別セッションの数の多さ(50件近く)があげられるかと思い
ます.社会科学と計算機科学の融合など,近年ホットとなりつつあるトピック
も広くカバーされており,ご興味のあるかたはワークショップの一覧をチェッ
クされると良いかと思います.

今回,私はポスター発表するために参加しており,最後にその内容を簡単にご
紹介させていただきます.題目は "Accelerating Feature Engineering with 
Adaptive Partial Aggregation Tree" で,内容は機械学習の特徴量加工処理
に頻出するデータの集計処理を高速化するDB技術を提案するものです.特徴量
の加工処理が試行錯誤であり「何度も繰り返される」ことと,集計処理がある
種の「分割統治性を持つ」ことから,集計処理を細かく分解した上で,各部分
的な集計処理の結果を効率的にキャッシング&再利用する技法を提案していま
す(DB分野におけるマテリアライズドビューの考え方を応用した技法です).

次回の BigData 2019 は 2019 11/9 -- 11/12 にロサンゼルスで開催予定です.
注目度も高く,多くの分野が合わさった非常にユニークな会議となっておりま
すので,ぜひ論文の投稿先のひとつにして頂ければと思います.

小山田 昌史(NEC データサイエンス研究所)


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■6■ ABCSS2018@IEEE BigData 2018 開催報告
                    吉田 光男(豊橋技術科学大学)

2018年12月10日にアメリカ・シアトルにて開催したThe 3rd International 
Workshop on Application of Big Data for Computational Social Science
(ABCSS2018@IEEE BigData 2018)について紹介します。このワークショップ
は,計算社会科学研究会が中心となり,ここ3年,IEEE BigDataで開催してい
る国際ワークショップです。計算社会科学研究会はどの学会にも属さない独立
系の研究会で,この国際ワークショップのほかにも,人工知能学会の全国大会
でオーガナイズドセッション(ワークショップ)を企画し,また,年に一度の
研究会を開催しています。計算社会科学(Computational Social Science)は,
人間・社会と計算機の組合せが可能になったことで実現した新しい学際科学で
す。計算社会科学に関する国際会議として,すでにInternational Conference 
on Computational Social Science(IC2S2)があるものの,社会科学の発表文
化(学術交流文化)を踏襲しており,予稿集が作成されません(アブストラク
トによる査読はあります,既発表可)。ABCSSはコンピュータサイエンスの発
表文化を踏襲した国際ワークショップとして運営しています(査読付きの予稿
集が作成され,主要な文献データベースに掲載される)。

ABCSS2018には,ワークショップへの投稿が17件と本会議不採択論文の転送が7
件との計24件の投稿がありました。ワークショップへの投稿論文については各
論文2名による査読を行ない,また,本会議からの転送論文については本会議
での査読コメント・スコアをもとにチェア4名による判定を行ない,最終的に
は16件を採択しました(2件の取り下げを含む)。IEEE BigDataのワークショッ
プでは,半日開催・終日開催のそれぞれに最低論文数が定められており,16件
は終日開催のための最低件数と同数です。日本のコミュニティが主催している
影響で,日本からの投稿が最も多いものの,投稿24件のうち12件が日本以外か
らの投稿でした。過去2回よりも日本以外からの投稿割合が高く,これは
WikiCFPに掲載した効果のように思います。関連する国際会議で直接宣伝して
みると,チェア・プログラム委員の大半が日本人であることは,日本以外から
の投稿を躊躇させると強く感じ,チェア・プログラム委員の国際化を進める必
要性を認識しています。

ABCSS2018での発表内容については,是非,関連リンクから論文を読んで頂き
たいのですが,何らかの分析をしたものが主でした。一般的に,コンピュータ
サイエンスでは,何らかのアルゴリズムやシステムを提案する工学的な発表が
主ですが,計算社会科学では,社会科学との学際科学ということもあり,既知
のアルゴリズムを用いて,未知の分析結果を明らかにすることが多いように思
います。今年もABCSSを開催したいと考えており,ワークショップ提案を企画
中です。過去3年はIEEE BigDataに提案してきましたが,分析研究とより親和
性の高いWeb Intelligence 2019(WI‘19)に提案することも検討しています。
詳細が決まり次第,dbjapan MLで案内いたしますので,投稿をご検討いただけ
れば幸いです。

関連リンク
https://css-japan.com/
https://css-japan.com/bigdatacss2018/
http://www.wikicfp.com/cfp/servlet/event.showcfp?eventid=80383
https://2019.ic2s2.org/
https://www.ai-gakkai.or.jp/my-bookmark_vol30-no6/

吉田 光男(豊橋技術科学大学)

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