日本データベース学会

dbjapanメーリングリストアーカイブ(2014年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 7, No. 5: iDB2014, WI2014, VLDB2014


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2014年10月号 ( Vol. 7, No. 5 )
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

寒暖の差が激しく,体調を崩しやすい季節となってまいりました.また,突
発的な降雨なども多く,天候に振り回される日々が続いております.関東で
はデング熱が騒ぎとなっており,まだしばらく体調に気を使う必要がありそ
うです.

本号では,8月に福岡にて開催されました,iDB Workshop 2014の開催報告
をご寄稿いただきました.国際会議報告としては,Webやデータベース分野
における重要会議である,8月中旬に開催されたWI 2014と,9月上旬に開催
されたVLDB 2014についてご寄稿いただきました.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見,あるいは次号以降に期待する
内容についてのご意見がございましたら,news-com [at] dbsj.org までお寄せく
ださい.

                             日本データベース学会 電子広報編集委員会

=======================================================================

----
目次
----

1. iDB Workshop 2014を終えて
    宮崎純 東京工業大学

2. WI 2014に参加して
    中村達哉 大阪大学

3. VLDB 2014に参加して
    北島信哉 (株)富士通研究所

=======================================================================

■1■ iDB Workshop 2014を終えて               宮崎純 (東京工業大学 教授)

2014年7月31日から8月2日の日程で、九州大学医学部百年講堂にて、今回が第
6回となるデータベース,Web,情報マネジメントに関する若手研究者国際ワー
クショップ(The 6th International Workshop with Mentors on Databases,
Web, and Information Management for Young Researchers)、通称iDB
Workshopを開催しました。

iDB Workshopは、データベースやデータ工学、情報検索に関連する分野の博
士課程学生(進学予定を含む)から学位取得後5年程度の若手研究者を対象とし
た会議です。国内外の著名の研究者がメンターとなり、若手研究者の研究テー
マが難関の国際会議・ジャーナルに採録されることを目標に、有意義かつ貴
重な議論を交わすことが趣旨となっています。同時に海外の著名な研究者に
よる充実したチュートリアルや招待講演が聴講できるのも大きな魅力となっ
ています。

今回は総勢で63名の参加がありました。そのうちメンタリングセッションで
は23件のメンティー(若手研究者)の口頭発表があり、口頭発表後のメンター
と一対一で議論するディスカッションでは内容の濃い議論がなされていまし
た。メンティーの若手研究者からは、非常に有益な議論ができたとともに、
今後の目標が定まり非常に良かった、との感想が聞かれました。

もう一つの目玉である招待講演は、Sanjay Madria先生(Missouri
University of Science and Technology)による"Sensor Cloud"、Wolf-Tilo
Balke先生(Technische Universitat Braunschweig)による"Conceptual
Views for Entity-Centric Search"、Tao Mei氏(MicroSoft Research Asia)
による"User-Centric Social Multimedia Analysis"、Bongki Moon先生
(Seoul National University)による"Addressing I/O Bottleneck in OLTP
Systems with Flash Memory"という各演題で行われ、いずれも非常に興味深
く、先進的な話題でした。また、Mohamed Mokbel先生(University of
Minnesota)によるチュートリアル"SpatialHadoop: A MapReduce Framework
for Spatial Data"も、2セッション分を通して初歩から応用に至るまで丁寧
な解説が非常に印象に残りました。

このように、iDB Workshopは本コミュニティーの発展にとって非常に重要な
役割を担っており大変好評ですが、一方で、国内外のトップレベルの研究者
は大変お忙しく、全メンターのスケジュールを考慮をしつつ、メンターとメ
ンティーの研究分野がマッチするようにプログラムを作成することには困難
を伴いました。

来年もiDB Workshopが開催される予定ですので、若手研究者の方々からの積
極的な投稿を強くお勧めします。これは単に著名研究者からアドバイスをも
らうためだけでなく、将来の研究分野のネットワーク作りにも非常に役に立
つと思います。

最後となりますが、実行委員長の中野先生(芝浦工大)、プログラム副委員長
の大島先生(京大)、ローカルアレンジメント委員長の牛尼先生(九大)、財務
委員長の鈴木先生(名大、現在奈良先端大)、国際関係委員長の清水先生(京
大)、エクスカーション委員長の岩井原先生(早大)、広報委員長の白川先生
(阪大)をはじめ各スタッフの方々には、迅速かつ的確に作業をこなして頂い
たお陰で、成功裏に会議を終了することができました。この場にて感謝の意
を表したいと思います。


(宮崎純  iDB Workshop2014プログラム委員長
              東京工業大学 大学院情報理工学研究科 教授)

--------------------------------------------------------------------

■2■ WI 2014に参加して        中村達哉 (大阪大学 博士前期課程2年)

8月11日から8月14日にかけてポーランドのワルシャワで開催されたWeb 
Intelligence (WI) 2014に参加しました.
WIはその名の通りWebに関する幅広い研究を取り扱っている会議です.
会場となったワルシャワ大学はその周辺にフレデリック・ショパンに縁のあ
る建物や第二次世界大戦以前の町並みを復元した旧市街や宮殿等のワルシャ
ワを代表する施設が点在しており,歴史や芸術を直接肌で感じられる素晴ら
しいところでした.

今回のWI2014が私にとって初めて国際会議への参加および英語での口頭発
表でしたので,論文投稿から発表までで苦労したことや感じたことを振り返
ってみたいと思います.

実は,国際会議への論文投稿自体はWI2014で2回目となります.
初の英語論文を書くことになった前回の投稿時の様子を思い返すと,英語を
書けば書くほど真っ赤に修正され,自分の英語力の無さを痛感しました.
前回投稿した論文は残念ながらリジェクトとなってしまいましたが,その際
に頂いたコメントを元に論文を修正し,WI2014に投稿した結果,アクセプ
トされ今回WI2014へ参加することができました.
2回目の執筆なので以前よりはまともに書けるかと思いましたがそう簡単に
いくはずもなく…でした.
発表資料の作成は論文執筆に比べればスムーズにできたと思いますが,スケ
ジューリングが甘く発表練習の時間を十分に取れなかったことを反省してい
ます.

出発日の8月10日の朝.この日は大阪に台風が直撃する予報,というか直撃
しており,搭乗予定の飛行機が飛ぶまでハラハラものでした.
実際,私が搭乗した便より前の便はすべて欠航になっており,それ以降の便
にも幾つか欠航が決まったものもありました.
私はなんとか無事に関西圏を脱出できましたが,欠航の影響で2日目からの
参加となった日本からの参加者もおられました.
WI2014の特徴として,他に3つの会議が同時開催されており,Webに関する
研究以外にも様々な分野の研究発表や講演を聴講できるという点があります.
しかし,会議日程の半分近くがキーノートというスケジュールだったため,
同じ時間帯に似たトピックを扱うセッションが並列で行われ,興味のある発
表を聴講できないことが何度かありました.
また,初日のワークショップから発表者の欠席が多く,本会議でも発表者が
全員欠席したセッションがあるなど,非常に残念なところもありました.
私は会議3日目の13日午前のセッションで発表を行ないました.
発表内容は,短文かつ異なる言語で記述されたテキスト間の関連度計算手法
に関するものです.
講義室のような部屋で20名ほどの聴講者を前に,ガチガチに緊張し,早口
になってしまったために練習時よりずいぶんと早く終わってしまいました(正
確な時間を計っていないので錯覚かもしれません).

今回のWI2014参加を通して,やはり,自身の英語力不足を実感することに
なりました.
一方で,上手い発表を見ることで,自分もこんな風に発表できるようになり
たいというモチベーションを得ることもできました.
今後も,今回の経験を活かして,国際会議への積極的な投稿・参加を行ない,
自身の研究力・英語力・プレゼンテーション力を鍛えていきたいと思います.

(中村達哉 大阪大学 大学院情報科学研究科 博士前期課程2年)

--------------------------------------------------------------------

■3■ VLDB 2014に参加して  北島 信哉 ((株)富士通研究所)

2014年9月2日から4日にかけて,中華人民共和国浙江省杭州市で開催された
VLDB 2014に参加しました.杭州市は上海市の南西に位置する人口800万人
ほどの大都市で,中国八大古都の1つと言われており,2011年にユネスコ世界
遺産(文化遺産)に登録された西湖が観光地として有名です.会場は西湖にほ
ど近い杭州黄龍飯店という巨大ホテルでした.宿泊棟が6つ,敷地の中央には
広大な中国庭園まであり,最初はホテル内で迷子になってしまうほどでした.

今年のVLDBは参加者が800名超となり,やはり開催地である中国国内からの参
加者が大幅に増えていました.一方で,日本からの参加者は昨年に比べてなぜ
か半減していました….投稿数は695件,うち採録数が139件で,採録率は20%
でした.投稿の多かった分野はデータ分析,Tree/Graph/半構造データ,クエリ
処理で,ビッグデータとの関連が色濃く出ているように感じられました.クエリ
処理はトラディショナルな分野ではありますが,本VLDBにおける発表では研究
背景として対象データの大規模化やインメモリデータベースの発展などが挙げら
れており,ビッグデータ分析に伴って新たなクエリ処理手法に対するニーズが高
まっていると言えそうです.キーノートやチュートリアル,パネルセッションに
おいてもビッグデータが主題となっているものが多く,注目度の高さが顕著に現
れていました.ベストペーパーは5本あり,データ分析2本,Graph,クエリ処理,
インデクシングと,おおよそ投稿数の多い分野から選出されていました.

今年のVLDBでは,各キーノートセッションにおいて,Industrial Keynoteと
Academic Keynoteの2つを続けて行う,という方法が試みられました.企業と
大学における研究のシナジーを目指したものだと思われますが,それぞれの主題が
異なっていることやAcademic Keynoteの時間が短く設定されている(Industrialの 
約45分に対し,Academicは約20分)こともあり,1つのセッションに2つのキー
ノートを詰め込んだだけのような印象を受けました.また,各リサーチセッション
において,まずセッションチェアが全体の背景や各論文の手法の概要を10分ほど
説明した後,各発表者が発表を行い,質疑は最後にまとめて行う,というパネルに
近い発表形式が取られました.セッションチェアのまとめ方に左右される部分もあ
りますし,通常の発表形式の方が良いという意見もありましたが,最初に全体像を
把握できるため,その後の発表を聞く際の導入として良いと感じました.質疑を最
後にまとめて行う点については,質疑までに間が開くため質問がしづらい様子もあ
りましたが(いくつかのセッションでは,発表直後に1つ程度の質問を先に受け付
けていました),発表者同士で議論が行われる場面もあり,改善の余地はあるもの
の面白い試みであったと思います.これらの試みについては,バンケット時にアン
ケート用紙が配布されていましたので,アンケート結果を踏まえて今後のVLDBに
反映されることと思います.

最後になりますが,今回のVLDB 2014への参加はACM SIGMOD日本支部の国際会
議派遣によるものです.このようなトップカンファレンスに参加するのは私自身初
めてであり,数々の興味深い講演や発表の聴講できたことに加え,研究者同士の繋
がり作りもでき,貴重な経験になりました.この場を借りて,ACM SIGMOD日本支
部の皆様に心より感謝いたします.


(北島 信哉 (株)富士通研究所 
    システムソフトウェア研究所 システムマネジメント研究部)

=======================================================================