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[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 9, No. 5: UbiComp 2016, ACM Multimedia 2016, CIKM 2016, SIGIR 2017に向けて

  • To: dbjapan [at] dbsj.org
  • Subject: [dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 9, No. 5: UbiComp 2016, ACM Multimedia 2016, CIKM 2016, SIGIR 2017に向けて
  • From: Yuanyuan WANG(王 元元) <y.wang [at] yamaguchi-u.ac.jp>
  • Date: Thu, 1 Dec 2016 10:03:01 +0900 (JST)
  • Importance: Normal

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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2016年12月号 ( Vol. 9, No. 5 )
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師走を迎え,何かと気忙しい毎日ですが,皆様いかがお過ごしでしょうか.年末
ご多忙の折ではございますが,お体にお気をつけて良き年をお迎えください.

さて,本号では,9月に開催されました,ユビキタスコンピューティング分野のト
ップカンファレンス「UbiComp」をはじめ,マルチメディア分野および情報検索,
データベース,ナレッジマネジメントでの最重要国際会議「ACM Multimedia」と
「CIKM」についてご寄稿いただきました.それぞれの会議の特徴や最近の傾向,
トップカンファレンスへの投稿のメリット,論文採択に至るまでの工夫など,皆
様のご参考になれば幸いです.

さらに,DBSJ Newsletterの2016年8月号から開始したSIGIR 2017に向けた連載記
事についてもご寄稿頂きました.今回は7回分の連載のうち3回目の記事になりま
す.今回の記事では企業スポンサー募集案内をご紹介いただきます.

SIGIR 2017に向けた連載記事は以下の通りです.

1. 2016年 8月号 ACM SIGIR Conferenceとは? (加藤誠 京都大学)
2. 2016年10月号 SIGIR 2017 論文執筆 Tips  (上保秀夫 筑波大学)
3. 2016年12月号 企業スポンサー募集案内   (加藤恒昭 東京大学)
4. 2017年 2月号 DEIM でのイベント告知 (Workshop 投稿告知)
                      (大島裕明 京都大学)
5. 2017年 4月号 SIGIR 2017 ボランティア募集 (欅惇志 東京工業大学)
6. 2017年 6月号 SIGIR 2017 参加募集     (村上晴美 大阪市立大学)
7. 2017年 8月号 SIGIR 2017 アナウンスメント (高久雅生 筑波大学,
                     江草由佳 国立教育政策研究所)

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたらnews-com [at] dbsj.orgまでお寄せください.



                日本データベース学会 電子広報編集委員会

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目次
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1. UbiComp 2016 参加報告
    前川卓也 大阪大学

2. ACM Multimedia 2016 参加報告
    Xueting Wang  名古屋大学

3. CIKM 2016 参加報告
    今森大地  株式会社CyberZ

4. SIGIR 2017 企業スポンサー募集案内
    加藤恒昭 東京大学

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■1■ UbiComp 2016 参加報告             前川卓也 (大阪大学)
                                      
The 2016 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous
Computing (UbiComp 2016)
日時:2016年9月12日(月)- 9月16日(金)
場所:ドイツ・ハイデルベルク
URL:http://ubicomp.org/ubicomp2016/

2016年9月12日から16日まで,ドイツのハイデルベルグにてUbiComp 2016が開催
された.UbiCompはユビキタスコンピューティング分野のトップ国際会議の一つ
であり,2013年からウェアラブルコンピューティングのトップ会議であるInter
national Symposium on Wearable Computers (ISWC)と併設して運営されている.
今回のUbiComp/ISWCは参加者数は701名であり(ワークショップ含む),2015年
に大阪のグランフロントで行われたUbiComp 2015の参加者数である861名を若干
下回った.UbiCompの一般論文は,481件の投稿のうち101件のフルペーパー,13
件のノートペーパー(ショートペーパー)が採録され,その採択率は23.7%,投
稿件数はこれまでの最多を記録した.昨年の投稿件数が394件であったため,約
100件も投稿数が増加したことになるが,採択率に関しては昨年が30.6%であった
ため7%ほど低下していた.

昨年のUbiComp 2015は大阪で開催されたため,私が調べた限り9本の論文が日本
から採択されていたが,その流れを受けてかドイツで開催されたにも関わらず今
年は日本から8本の論文が採択されており(大阪大学 原隆浩先生調べ),かなり
健闘していたように思われる.投稿数で見てみても,アメリカ,中国に次ぐ3位
であり,約50本の論文が日本から投稿されていた.大阪で開催されたUbiComp 20
15により,多くの日本人研究者がこの研究コミュニティに参加し,また同時に研
究レベルの底上げが行われたのかと思うと,微力ながらUbiComp2015の開催に貢
献した私としても嬉しい限りである(昨年のDBSJ Newsletter Vol. 8, No. 5に
て報告).また,他学会の活動の話題になり恐縮ではあるが,情報処理学会 ユ
ビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会では2013年度からUbiComp/
ISWCに採択された学生会員の参加費・旅費の支援を行っており,このような活動
も日本からの積極的な投稿,ひいては研究レベルの底上げに貢献しているのでは
と思っている.なお大阪大学の私の研究グループからも幸い多くのフルペーパー
がUbiCompに採択され,他の世界の主要な研究グループの採択数を調べた限りでは,
私の研究グループの採択数が世界で最多(タイ)だったようである.旅費のかさ
むドイツ開催の会議でも心置きなく多数の論文を投稿できたのは,このような支
援制度の充実にある所も大きく,この場を借りて感謝したい.

さて肝心の会議で発表されていた論文に関してだが,私は自身や学生の発表など
があったせいもあり,それほど集中して他の発表を聴講できていたわけではない
が,私の感じた発表論文のトレンドに関して報告したいと思う.ユビキタスコン
ピューティングの多くの研究では,人の状況を何らかの方法で認識してサービス
を行うという考えが軸となっているため,UbiComp 2016でも人の位置情報や行動
/ジェスチャをセンサとパターン認識技術を用いて推定するという研究が多く発
表されていた.MobiComやMobiSysなどの他の会議でもトレンドになっているが,
WiFiチャンネル状態情報(CSI: Channel State Information)を用いた認識技術
が私の印象に残っており,指を動かすジェスチャを被験者に一切のデバイスを装
着させることなくWiFi電波の情報のみを用いて認識する技術に関する論文がベス
トペーパー賞を受賞していた.また,他のパターン認識関連の会議に比べて深層
学習(ディープラーニング)に関する論文が少ないように感じられた.音声認識
やコンピュータビジョンなどの研究に比べて学習用データの収集にコストがかか
るため,学習用データを大量に必要とする深層学習の適用が難しいのではと感じ
ている.しかし,ISWCでは深層学習と転移学習を用いることで,認識対象のユー
ザの学習用データ収集コストの低減を試みる研究なども発表されており,注目を
集めていた.

来年のUbiCompは9月11日から15日までハワイのマウイ島で開催されるが,その論
文投稿方法がVLDBと同様にジャーナル形式に変更されることとなる.年に4つのI
ssueが発行され,2017年の3月,6月,9月に発行のIssueに採択された論文がUbiC
omp 2017にて発表される予定である.

(前川卓也  大阪大学大学院 情報科学研究科 准教授)

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■2■ ACM Multimedia 2016 参加報告           Xueting Wang (名古屋大学)

ACM Multimedia (ACMMM)は,毎年開催されるマルチメディア分野の世界トップク
ラスの国際会議です.今年はオランダのアムステルダムにて10月15日〜19日の5
日間開催(うち本会議は17日〜19日の3日間)されました.2016年で24回目の開
催となっています.アムステルダムはオランダ最大の都市です.中央駅を中心に
市内に網目状に広がる運河が有名で,運河沿いには歴史感と文化感を感じられる
建物が多くあります.今回のメイン会場は,有名で芸術的な建物であるPath&#233;
Tuschinskiシアターでした.

ACMMMはCV/PR,情報検索・マイニング,言語・音声処理,テキスト処理,マルチ
モーダル解析と応用,HCI/UI, 通信など,マルチメディア解析と応用を中心した
広範な研究領域をカバーしています.なお,今年のACMMMの投稿数は650件,その
うちlong paperの採択率が22%,short paperの採択率が31%でした.その中で,
マルチメディアとビジョン(Multimedia and Vision)領域の投稿数が一番多く,
次いでマルチメディア検索と推薦(Multimedia Search and Recommendation),
マルチメディアディープラーニング(Deep Learning for Multimedia)が多く投
稿されていました.このことから,画像と映像を用いる研究が多くされているこ
とがわかります.また,Deep learningはマルチメディア分野でも近年大きな注
目を集めており,今年もその傾向は続いていました.

ACMMMは全体として9パラレルセッションで行われました.1-2日目は同時期にア
ムステルダムで開催されたEuropean Conference on Computer Vision (ECCV) 20
16との共催となるチュートリアル・ワークショップセッションでした.計11から
なるチュートリアルは,マルチメディアとビジョン分野の様々なテーマが解説さ
れました.Montreal UniversityのYoshua Bengio先生は“Fundamentals of Deep
Learning”というタイトルで,Deep learning を紹介しその未来を展望しました.
Microsoft Research のシニア研究者であるTao Meiは,画像・映像と言語を繋げ,
画像・映像の自動キャプション・コメント生成などの技術と応用を紹介しました.
3-5日目は本会議であり,long/short paperのオーラル/ポスター発表,ビデオデ
モ発表が行われました.また,マルチメディア分野の継続的な発展に向けて,新
しい研究の方向性や新技術を議論するセッションであるBrave New Ideasも設けら
れておリ,緊急状況管理のためのマルチメディアシステム開発のチャレンジ,マ
ルチメディアと医学などのテーマについて議論されました.他にも,企業が設定
したタスクに対するソリューションを競うセッションであるMultimedia grand
challenge (MSR Image Recognition Challenge)とOpen source competition (MSR
Video to Language Challenge)では,学術界と産業界のつながりが重視されてい
ます.そして,博士後期課程の学生を中心とし,議論を通して博士論文の研究を
当分野のシニア研究者から指導・支援してもらうDoctoral Symposiumセッション
も行われていました.

2017年はアメリカのSILICON VALLEY, CALIFORNIAで10月14日〜18日の期間での開
催が予定されています.是非とも投稿,参加をご検討ください.

(Xueting Wang  名古屋大学 大学院情報科学研究科 博士後期課程)

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■3■ CIKM 2016 参加報告           今森大地 (株式会社CyberZ)

2016年10月24日から28日にかけて開催された2016 ACM International Conference
on Information and Knowledge Management (CIKM 2016)に参加し,論文発表を
して参りました.CIKMは情報検索,データマイニング,データベースといったデ
ータサイエンスに関する話題を広く扱う主要国際会議の一つであり,今年で25周
年を迎えました.また,今年はあらたに“Frontier and Applications of Big
Data Science”というテーマを掲げ,基礎から応用まで,取り上げられる分野は
ますます広くなっているそうです.例年通りFull Paperの採択率は低く,CIKM
2016の採択率は17.6%(165/935)となっています.今年はアメリカのインディアナ
州インディアナポリスでの開催でした.成田空港から13時間のフライトを経て,
日本との時差13時間の地になります.インディアナポリスは日本の東北地方とほ
ぼ同じ緯度に位置し,10月でもとても冷え込むとのことでしたが,今年は例年に
比べ暖かく,とても快適な気温となりました.

会議初日はTutorialとCareer Dayが設定され,夜にはWelcome Receptionがあり
ました.中三日間は朝一番にKeynoteがあり,その後に論文発表という構成です.
最終日には各種Workshopやデータ分析コンテストであるCIKM Cupが開かれていま
した.総参加者は509人で,国別で見ると,中国が一番参加人数が多く,続いて,
アメリカ,インド,韓国,ドイツ,日本となります.特に,中国からの参加者が
突出して多く全体の三分の一を占め,アメリカから日本までの参加者を合わせた
人数と同じくらいの参加者となっていました.

本学会は私の初めての国際学会参加であり,今回採択された論文は,私の大学時
代の卒業論文がベースになっています.卒業論文の時点では,研究アイデアも詰
めきれておらず,また,評価実験に関してもデータ数や比較手法などもろもろ不
十分でした.その後,修士課程の2年間で研究を進め,また,その間にさまざま
な主要国際学会に提出しつつ,それらのレビュー内容から改善を行いました.そ
の結果として今回の採択があります.何度も不採択通知を受け取りましたが,そ
の分,“Congratulations!”の文面を見たときの喜びはひとしおでした.また,
採択までの試行錯誤の過程で得られたアイデアや評価方法など,次の研究に活か
すことのできる多くの学びもありました.

2017年のCIKMはシンガポールで開催されるそうです.会議半ばに合ったBusiness
Meetingでは,シンガポールの良さを力いっぱいプレゼンテーションされていて,
私も見ていて現金ながら行ってみたいと思ってしまうほどでした.データサイエ
ンスに関する分野の,基礎から応用,AcademicからIndustryまで幅広く扱うCIKM,
興味を持たれた方は投稿・参加をご検討されてはいかがでしょうか.

(今森大地  株式会社CyberZ 京都大学修了生)

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■4■ SIGIR 2017 企業サポーター募集案内            加藤恒昭(東京大学)

シリーズでお伝えしているSIGIR 2017ですが,今回はサポーター募集をご案内さ
せていただきます.サポーターという用語は耳慣れないかもしれませんが,SIGIR
カンファレンスでは,一般にはスポンサーと呼ばれるような,ご協賛いただく企
業の皆様をサポーターと呼ばせていただいています.ちなみにSIGIRカンファレン
スのスポンサーはACMとSIGIRです.

既にお伝えしていますようにSIGIRカンファレンスは,情報検索やウェブサーチに
関する最も権威のある国際会議です.最新の研究成果の発表と,最先端の技術や
システムのデモンストレーションが行われ,また,学術界と産業界とのよいネット
ワーキングの場ともなっています.トップレベルの国際会議ですので,SIGIRカン
ファレンスには,世界中から,この分野の先導的立場の方々と,将来を担う有望
な研究者が集まり,最先端の研究を発表します.これまで,毎年,約30から40の
国から,厳しい査読を経た200件以上の学術論文の発表があり,世界各国から500
人を超える参加者が集っています.

第40回という記念すべき年にSIGIR 2017として日本の東京で開催されます.世界
中から集まる名だたる大学の優秀な大学院生や著名な研究者と直接面談できます
ので,採用活動の貴重な場ともなりますし,SIGIR 2017を支援し,会場で展示を
行うことは,世界的にも強い影響力を持った参加者に対しブランドを宣伝するま
たとない機会となります.会期中はもとより,その準備期間においても,サポー
ターの皆様を市場へ大々的にアピールすることとなります.

SIGIR 2017のサポーターは大きく2種類に別れます.基本サポーターと特定サポ
ーターと呼ばせていただいています.基本サポーターは特に用途を定めず,カン
ファレンス全体をご支援いただく形のサポーターです.一方,特定サポーターは,
チャイルドケア,ワークショップ,ポスターセッション,コーヒーブレイクなど,
カンファレンス内の特定のアクティビティをご支援いただきます.特定サポータ
ーの中で,特にお薦めしたいものがチャイルドケアサポーターです.SIGIR 2017
では,参加者がお連れになったお子様を会場(京王プラザホテル)内の託児施設
にお預けする費用を支援するというこれまでに例のない取り組みをします.チャ
イルドケアサポーターにはこの取り組みへのご支援をいただきます.

それぞれのサポーターの皆様に,魅力的な特典をご用意しています.すべてのサ
ポーターをホームページやカンファレンスプログラムでご紹介させていただきま
す,基本サポーターはダイヤモンドからブロンズのカテゴリがありますが,それ
に応じて,無料ご招待や展示ブースの提供(ブロンズは除きます)があります.
特定サポーターには,バナー掲示やスピーチ等,それぞれのアクティビティの中
でプレゼンス向上の機会をご提供いたします.

サポーターの他に,出版社や書店など,参加者に関連の深い分野の商品を扱われ
ている方々には出展社としてご参加いただくこともできます.詳しくはSIGIR 20
17ホームページ(http://sigir.org/sigir2017/)のsponsorsの項目をご参照下さ
い.第40回という記念すべき年に東京で開催されますSIGIR 2017へ,皆さまのご
参加を心よりお待ち申しあげております.


(加藤恒昭  東京大学 大学院総合文化研究科 教授)

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王 元元
山口大学大学院創成科学研究科
工学系学域・知能情報工学分野
(兼担:工学部知能情報工学科)
助教 博士(環境人間学)
y.wang [at] yamaguchi-u.ac.jp
circl.wang [at] gmail.com

Yuanyuan Wang, Ph.D
Assistant Professor, Information Science and Engineering Section,
Department of Engineering,
Graduate School of Sciences and Technology for Innovation, Yamaguchi
University, Japan 
E-mail: y.wang [at] yamaguchi-u.ac.jp
        circl.wang [at] gmail.com